とある山あいの小さな村に、東京から研修医の相馬(瑛太)が赴任してくる。そこで相馬は、伊野(笑福亭鶴瓶)という医師と出会う。住民のほとんどが高齢者のこの村で、伊野は村人の診療をたった一人で引き受けていた。過疎の村の現実に戸惑っていた相馬も、やがて伊野の献身的な姿に共感するようになる。そんなある日、鳥飼かづ子という一人暮らしの未亡人が倒れる。自分の体がもうだいぶ悪いことに気づいている彼女は、伊野に「一緒に嘘をついてください」と頼む。その願いを聞き入れたことから、伊野の嘘に少しずつほころびが生まれ始める・・・。
「ゆれる」で注目を集めた女流監督西川美和の最新作。一人の男の嘘が巻き起こす、ちょっと切ない人間ドラマです。
人はみんな社会の中で生きていくために仮面をかぶっているもの。主人公のかぶった仮面は、少々やりすぎだったかもしれないけれど、その仮面をかぶった姿にすがる人々がいて、その期待に答えていくうちに、仮面が素顔になってしまった。人間って、他人に期待され、必要とされることで、自分の存在理由とか、生きていく価値に気づくのでしょう。そして、困っている人がいれば、思わず手を差し伸べたくなるのが人間の人間たる所以なのかもしれません。そんな人間のおかしくも切ない心の機微を、西川美和監督は丹念に描き出します。僻地医療や高齢化など、誰もが直面する普遍的な問題もとりいれつつ、心地よいユーモアとちょっとしたサスペンス風味で、作品を軽やかなタッチに仕上げています。
主演の笑福亭鶴瓶の好演も本作の良さをさらに引き立てています。見た目からして非常に個性的で、誰がどう見ても鶴瓶以外には見えないにもかかわらず、その個性が見事に役柄である伊野治の個性となっている。作品への溶け込みぶりが素晴らしいです。深夜番組で下半身を露出した過去を持っている人とは思えません(笑)。彼を主演にしようと考えた西川監督の慧眼もお見事です。
見終わった後ほのぼのと暖かい気持ちになれる作品。おすすめです。
公式サイト
http://www.deardoctor.jp/
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