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2016年06月23日

帰ってきたヒトラー

今日は『帰ってきたヒトラー』についてです。ほんのちょっとですが、ネタバレの部分がありますので、未見の方はご注意ください。

あのヒトラーが現代にタイムスリップ、物まね芸人に間違われたことがきっかけで人気者になっていくという奇抜な設定が受け、ドイツで2012年に出版されるや大反響を巻き起こした小説の映画化作品。

非常に人心掌握術に長け、演説がうまかったと言われるヒトラーにとって、テレビとネットが存在する現代は、70年前以上に自らのメッセージを広めやすい理想の環境が整う世界。ひとたびテレビに出れば、ドイツが抱える問題点をズバッと指摘して共感を集め、ネット上でもあっという間に人気者になっていってしまいます。ドイツの実在の政治家たちを罵倒するモノローグとか、確かに笑えます。大体メルケル首相をデブ女とか言っちゃうんですからね。現役の首相をこんな風に罵倒するなど、日本の映画じゃ絶対無理。

そもそもかつてヒトラーが率いたナチ党を第1党にしたのもドイツの国民たち。アメリカ大統領選におけるトランプ候補の過激な発言などもそうですが、結局、人々は自らに心地よいことを言ってくれる人に熱狂し、簡単に扇動されてしまうという事実はいつの時代でも同じなのだ、ということを痛感させられます。

面白いのが途中のドキュメンタリーシーン。主演のオリヴァー・マスッチがヒトラーの格好をしたまま町に現れ、ゲリラ撮影されているのですが、まるで本当にヒトラーが現れたかのように、人々が本音を吐露するんですよ。それも、大戦中のドイツを懐かしんだり、移民に対する不満をぶちまけたり、差別的なことを言ったりと「みんな、そんなに本音をズバズバ言っちゃって大丈夫か?」と言いたくなる内容ばかり。そうかと思えば、一緒に写メをとったり、サインを求めたりする人もいて、みんな完全に面白がっているんですよね。彼のことを不愉快だ、とかいう人はごく一部しか出てきませんでした。もちろん、これは膨大に撮影したうちのごく一部を編集して使っているわけですが…。

ドイツにとって、ヒトラーは最大のタブーだと思うんですが、さすがに戦後70年が経つと、もうネタに消化できるようになったということなんでしょうか。もちろん、そのおかげで本作のようなヒトラーを笑い飛ばしつつ、愛国心や人の心の中にある非寛容さについて考えさせられるいい作品も登場するわけですが、同時にヒトラーが行ったことをみんなきちんと理解しているのかな、ということもすごく気になりました。だから、クライマックスで痴ほう症のおばあちゃんだけが、彼のことを面白がらず、「あんたのしたことは忘れない」というシーンは深く胸につき刺さります。この辺になると、だんだん笑えなくなってきて、少し背筋が寒くなるような感じになってくるのが、この映画の見事なところであり恐ろしいところでもあります。

本作の舞台であるドイツをはじめ、アメリカや日本など、世界中で非寛容な空気が広がる現代社会を痛烈に皮肉った、ブラックユーモアあふれる快作でした。なかなか客入りも好調なようで、劇場も増えるということなので、ぜひスクリーンでご覧いただきたい作品です。

公式サイト
http://gaga.ne.jp/hitlerisback/

主演のオリヴァー・マスッチのインタビュー(サイト外に飛びます)
ヒトラーの格好にドイツ市民はどう反応したか? 『帰ってきたヒトラー』主演俳優インタビュー|Real Sound|リアルサウンド 映画部

原作(文庫版 上下)、合本版

原作(kindle版 上下)、合本版

サントラ

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posted by 支配人見習い1号 at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 (カ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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