本作は、日本在住の中国人ドキュメンタリー監督リ・インが、10年近い歳月をかけて完成した渾身のドキュメンタリー作品です。各国の映画祭で大きな話題となったものの、日本国内においては上映自粛騒動などが発生、ニュースや新聞等での報道をご覧になった方も多いと思います。
作品は、大きく分けて二つのパートで構成されています。ひとつは8月15日、終戦の日に靖国神社に集う人々を記録した部分。ここには本当にさまざまな人々が映し出されます。旧日本軍の軍服を着て参拝に訪れる集団、何が問題になっているのかきちんと理解しているのかどうか疑わしいアメリカ人(国では不動産屋をやっているそうな)、「合祀された魂を返せ」と詰め寄る台湾人と韓国人の遺族たち・・・。一方、日本人遺族の中にも合祀に反対する人々がいるし、遺族の追悼集会に反対を叫んで乱入、「中国人は中国へ帰れ!」と罵倒されながら暴行され、顔から血を流しながら警察に連行されてゆく青年の姿も(でも、実は日本人)。靖国神社を肯定するもの、否定するもの、双方の考えがぶつかり合って、本当にここは日本なのかと疑いたくなるような、すさまじい熱気に包まれている終戦の日の靖国神社の姿には、ただ呆然とするのみ。
そして、終戦の日の靖国神社の姿を追ったパートを動とするならば、刀鍛冶の刈谷 直治氏が靖国刀の鋳造を再現してみせる姿を映す静のパートでは、和やかな雰囲気の会話の中で差し挟まれる監督からの質問に、はっきりとした答えを示すことのない刈谷氏の胸中に去来するものはなんだろうと想像しつつ、いまだに60年前の戦争の呪縛から解き放たれていない人たちがこんなにも大勢いて、そして、そのことにあまり思いを致すことがなかった自分のことが恥ずかしくもなる。見ていて非常に胸苦しいものがあって、見終わるとぐったりと疲れる映画ではありますが、まず、何はともあれ見てほしい、そしてなにかを感じとってほしい、刺激的な作品でありました。
それにしても本作、冒頭でも書いたように、上映自粛騒動のあおりを受けて、公開期間が縮小されるなどさまざまなトラブルに見舞われてしまい、現在のところは、渋谷にあるシネアミューズという劇場でのみの上映となってしまいました。しかも、劇場のあるビルの一階エレベーター前には警察官がいるし、劇場の中にも警備員がいて、上映中もスクリーンの横にずっと座っているという、異例の上映体制。今までいろんな映画を見てきましたが、もちろんこんな状態で鑑賞するのは初めてのこと。これって映画を楽しむ、鑑賞するという雰囲気じゃないですよね・・・。それにまた、渋谷の映画館で上映しているとは思えないほど観客の年齢層が高かったのも印象的だったなあ。まあでも、渋谷での上映も当初の一週間からさらに2週間延長されたそうだし、これからも全国で上映が予定されているので、興味のある方は公式サイトを確認の上、ぜひ劇常に足を運んでほしいですね。なお渋谷の映画館は毎回満席状態なので、早めに劇場に行くことをおすすめします。
公式サイト
http://www.yasukuni-movie.com/index.html
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